歌舞伎の舞台演出

▼「見得」
歌舞伎の演出主人公が心理的、物理的な追い詰められ、感情の昂揚が頂点に達した時に、劇中、動きを止めて形を決める歌舞伎特有の演技をいいます。

黒目を寄せてにらむ、口を開けて目を剥くなど、極端な表情や姿形で、まさに息詰まる瞬間の主人公を大映しにし、時間を止めるような効果をもたらします。

ツケという効果音が緊迫感をさらに強調します。見得にはいくつかの種類があり、石を投げる形に見せる「石投げの見得」、不動明王の形の「不動の見得」、柱に巻きつく「柱巻きの見得」、勇ましい「元禄見得」などが有名。

複数の登場人物が同時に見得を切る「引っ張りの見得」、舞台上の全員が絵のように静止する「絵面の見得」などもあります。



上図のイラストは元禄見得と言ってよく見かけるポーズですね。これは菅原伝授手習鑑「車引き」の場面で、十二代目市川団十郎の梅王丸です。力の強さを象徴する見得をきって、拳を握り手首を立てて、右手を頭上にかざし、左手を腹の前に出し、足の親指も立て、漲る力を示します。

▼「ケレン」
歌舞伎の演出「外連」とも書きますが、曲芸的な演技や奇抜な演出。意表をつく仕掛けで観客を驚かせ、楽しませる工夫。瞬時に鬘も衣装も変えて違う人物に替わる「早替わり」、宙を飛ぶ「宙乗り」などがあります。目立つためだけの演出とみなされ、邪道として非難された時期もありました。

幽霊や怪異、狐などの人間と異なる動きの描写、芝居の流れに即して用いられる場合は、視覚的な効果をあげます。

「東海道四谷怪談」の「ちょうちん抜け」「仏壇返し」「戸板返し」、「義経千本桜」の狐忠信の「高欄渡り」や「宙乗り」などが知られています。



▼「だんまり」
だんまりの語源は「黙り」で、一言も言葉を発せずに運ぶ一幕。暗闇の中という設定の下、複数の人物や宝物や紛失物等、芝居の鍵となる物を求めて無言のまま探り合い、立回りを見せる場面。

実際に舞台上を暗くするわけではなく、手探りで動くなど、演者が「見えない」という前提で観客に暗闇という状況を感じさせます。

ゆったりした音楽にのり、ところどころ見得をきりながら、スローモーションのように動く役者の姿形を見るところが、だんまりの面白さです。劇中の一部分の「世話だんまり」と、独立した一幕の「時代だんまり」があります。

後者は筋らしい筋はなく、一座の主な役者が大盗賊や姫君といった派手な扮装で、顔を見せる「顔見世」を目的とします。「宮島のだんまり」が有名。

▼「殺し場」
歌舞伎では殺人が行なわれる場面を「殺し場」と呼び、大立回りで殺す様子をじっくり見せます。殺しという本来は陰惨な状況を、背景に流れる音楽のリズムに乗った舞踊的ななめらかな動きで、ところどころ見得をきり、様式的に美しく演出されています。

殺される側は、一突きに殺されることはなく、じわじわと追い詰められ、傷つけられ、逃げまどう。

殺す側も刀をふりかざし、どこまでも追う。陰湿な加虐と被虐の美が描写されます。

「夏祭浪花鑑」「長町裏」の義平次殺しでは、夏祭りの囃子、殺し場の泥、そして役の扮装が独特の美学を写し出します。(写真下)

歌舞伎の演出

「曽我もようたてしの御所染」の「ほととぎす殺し」では、ある大名の美しい愛妾が、正室の母に毒を盛られ、苦しみもがきながら陰惨に惨殺されていく様に、残虐の美を写し出す。殺される側のしなやかな肢体と残酷さが際立つ場面です。

▼「屋台崩し」
御殿や屋敷などの屋台(建物)が崩れる様子を見せる大仕掛けな演出。天変地異や妖術使いが出る演目などで行なわれます。舞踊劇「将門」では、煙とともに建物が潰れていく様が豪快で妖術の力の大きさを感じさせます。「天竺徳兵衛」「地震加藤」などに見られます。

▼「戸板返し」
一枚の戸板の表と裏に打ちつけられたふたりの人物をひとりの役者が早替わりで演じる演出。「東海道四谷怪談」「隠亡堀の場」が有名。民谷伊右衛門が、流れてきた戸板を引き寄せると、まずお岩の死体が現れる。驚いてその戸板を裏返すと、今度は雇い人だった小仏小平の死体が現れ、さらにひっくり返すと、お岩が骸骨になっている仕掛け。

▼「仏壇返し」
仏壇の前にいた人物がその中に引き込まれる演出。仏壇の後ろに水車のような装置があり、その回転を利用しています。「東海道四谷怪談」「蛇山庵室」では、伊右衛門をそそのかした友人、秋山長兵衛が、お岩の幽霊に連れ込まれます。長兵衛が消えると、元の仏壇に戻るという仕掛け。

▼「提灯抜け」
燃え上がる提灯の中を幽霊がすりぬけてくる演出。「東海道四谷怪談」「蛇山庵室」で行なわれます。提灯が燃えつきようとする瞬間に、お岩役の俳優が箸箱のような装置に乗って押し出されてきます。提灯の中から出てきたように見えます。

▼「面灯り」
黒衣が長い柄のついた蝋燭の灯で、登場人物の姿を左右から照らします。役者の登場を印象づけたり、その怪しさを際立たせるための手法。灯がちらちらと揺れる風情に古風な趣があります。

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