「歌舞伎十八番」の1つで、通称『助六』とよばれています。
曽我五郎時致(そがのごろうときむね)は、花川戸の助六(はなかわどのすけろく)という侠客となって、源氏の宝刀友切丸(ともきりまる)を探し出すため吉原に出入りしています。
三浦屋の傾城揚巻(あげまき)と恋仲になった助六は、吉原で豪遊する意休(いきゅう)という老人が、この刀を持っていることを聞きだし、奪い返すというストーリーです。
【あらすじ】
前半には、助六との仲を意休に責められた揚巻が、悪態(あくたい)[悪口]で言い返す場面があります。
揚巻は、助六と意休を雪と墨に例え、また「くらがりで見ても助六さんと意休さんを取違えてよいものかいなァ」と命がけで言い放ちます。
ここは、揚巻を演じる立女方(たておやま)の貫禄を示す重要な場面です。
助六の「花道(はなみち)」からの出は、紫の鉢巻の由来を含めた助六の自己紹介ともいえる「河東節(かとうぶし)」の語りに合わせ、颯爽(さっそう)と舞踊のように演じられます。
このくだりは、「出端」とばれており、助六を演じる俳優の最初の見せどころです。
助六という役は、荒々しく豪快な「荒事(あらごと)」とやわらかく優美な「和事(わごと)」の要素を兼ね備えた役で、出端の振りにもこの役の性格がうかがえます。
なお「河東節」は、市川團十郎家(いちかわだんじゅうろうけ)の俳優が助六を演じるときに限って使用されます。
その他の家の場合は、尾上菊五郎家(おのえきくごろうけ)では清元(きよもと)、片岡仁左衛門家(かたおかにざえもんけ)は「長唄(ながうた)」を使用し、作品タイトルも変えて上演します。
上演時間は2時間